実録「未経験からの訪問看護師。実際に転職してみて、どうだった?」

転職活動お役立ち

私は、2019年に4年制看護大学を卒業し、大学病院の病棟看護師経験を2年積んだ後に、訪問看護師となりました。もともと訪問看護師には学生時代から多少の興味を持っていましたが、「訪問看護師=病棟での看護師経験を長く積まなければならない」というイメージが強く、看護師経験の浅い私は、なかなか転職に踏み出せませんでした。実際、看護大学を一緒に卒業した同級生の中に、新卒で訪問看護師に就職した人はいませんでした。

わずか2年の病棟看護師の経験後、実際に訪問看護師に転職して1年ほど経った今、私が感じていることをレポートしたいと思います。

訪問看護師へ転職したきっかけ

当時、病棟看護師として働いていた私は、病棟での看護師業務に負担を感じることが多く、人間関係も良いとは言いきれないピリピリした雰囲気の職場環境が苦痛でしたので、タイミングを見つけて転職をしようと考えていました。

そんな私が転職しようと実際に動き出せたきっかけは、同じ看護大学を卒業した同級生が、訪問看護師へ転職していたことを知ったこと。同級生も、新卒で病院の看護師として働いていましたが、1年半で病院を退職し、その後訪問看護師に転職。その同級生から、「やりがいを感じる」「看護師経験が浅くてもしっかりフォローしてもらえている」という話を聞き、自分もやってみたい、挑戦してみたいと思うようになったのです。

また、インターネットなどで在宅医療のニュースなどを読み、訪問看護の需要は年々高まっているという情報を得られたことも、転職を決めた理由の一つでした。訪問看護の需要が高まることで、未経験者の教育もしっかり行っているステーションが増えてきていることも知り、訪問看護未経験の私は、どのような教育体制なのかも面接で伺いつつ、転職先を探しました。結果的に私が転職先として選んだのは、都内に10拠点程度のステーションを持つ、中小企業でした。

訪問看護師に転職して1〜3ヶ月目のころの私

転職して間もないころは毎日が初めての経験ですし、漠然とした不安が常にありました。看護師経験はあるものの、病棟看護師の頃とは違う部分がたくさんあるので、訪問看護師ならではの業務を覚えていくことに必死の毎日。それでも、すぐに辞めたいと感じることはなく、向上心を持って日々頑張ろうと思えたのは、人間関係が良い職場環境であったことが大きかったと思います。

ただし、しっかりと職場に馴染みたいと思っていましたので、挨拶は徹底して行い、少しでも疑問点があればとにかく曖昧にはせずに、先輩方に報告や相談をするように心がけていました。また、先輩方の利用者への対応の仕方や仕事をする上での動き方をできる限り観察し、早く仕事に慣れるように努力しました。

私が配属されたステーションでは30代前半〜40代前半の職員が8名ほどいましたが、挨拶の徹底が奏功したのか、困ったことがあれば誰もが親身になって相談に乗ってくれ、利用者のことを第一に考えて仕事に取り組んでいる方ばかりであったため、とても活気のある雰囲気の良い職場環境と感じていました。「転職に踏み切ってよかった〜」と新しい職場に入職して間もない頃から感じられるような職場でした。

同じタイミングで入職された方は私含め4人でしたが、全員同じような看護師経験年数であり同世代だったので、とても心強かったことを覚えています。同時に、訪問看護師には若手の看護師の需要も高まっていることをことを改めて感じました。

現場に出始めて最初の2週間ほどは、先輩との同行訪問で利用者の自宅を回るので、どういった1日の流れで訪問を行うのか、実際にどんな看護を行っていくのかを知ることができました。

利用者1人に対して1〜3回程の同行訪問を終えた後、「1人で行ける」と先輩に判断してもらえれば、いよいよ1人での訪問がスタートします。最初はとても緊張しましたが、わからないことや疑問に思うことは先輩方にすぐ聞ける環境が整っていたため、その点は心強かったです。

1人で利用者のもとに訪問する訪問看護師は、利用者に異変があった際、素早くアセスメントして対応の判断をすることが重要です。医師へ報告するか、経過観察して様子を見るかの判断が難しい場合も多くあり、その際には他の看護師に相談することができるような環境であることも大事だと思います。プリセプターの先輩が常に気をかけてくれ、困ったことを相談するとフォローしてくださったため、疑問点や不安な部分をすぐに解決出来ることが少なくありませんでした。

病棟看護師とは違い、訪問看護師は子供から大人までの年代、かつ、あらゆる疾患の利用者さんの状態を観察していかなければならないので、自身の経験不足が原因で困惑してしまう場合もあります。その際は、先輩に質問しつつ、自身で復習も行うようにしました。病棟での看護師経験が少ないほど新しい勉強も必要となることが多いと思いますが、そこで得た知識を、利用者が自宅で過ごしやすくなるための介入に活かすことができたら、やりがいに繋がるのだろうと思います。先輩方の働く姿を見て、当初からそのように思いながら訪問看護に向き合うことができました。

そして半年が経過・・・

入職して半年が経過し、だいぶ仕事には慣れてきて楽しさも感じ始めていました。しかしその分、反省点や不安な部分も多くでてきます。徐々に任される仕事も増え、より責任感を持って行動しなければならないというプレッシャーもあります。訪問看護は、病棟での看護と比べて、圧倒的に他職種との連携が密であり、情報共有が大切。そして、利用者に関する知り得た情報をすべて情報共有してしまうのは、本当に必要とされる情報が埋もれてしまう可能性もあるため、きちんとアセスメントした上で本当に必要な情報のみを共有することが求められます。私は他職種と連携を取るたびに、利用者に関するアセスメントが合っているか、必要な情報を共有することができているか、不安になることもしばしばでしたので、その都度、先輩看護師に確認していました。

情報共有を行うべき場面は日々出てくるため、何度も経験するうちに、徐々に情報共有するべき内容が理解できるようになっていきました。自分のアセスメントで情報共有を行い、医師の指示やケアマネージャーによるサービスの変更が実際に行われた時には、自身の情報共有が役に立っていることを実感できるので、そこでやりがいを感じることができます。

また、情報共有や利用者に対するケアサービスの確認をするために行われる担当者会議にも、看護師代表として参加するようにもなり、より一層責任感を感じ始めていました。しかしここでも、事前に確認しておきたい情報は他の看護師とも共有して確認しておくことができる環境であったので、少し気持ちに余裕を持って担当者会議に参加することができました。また、ケアサービスの見直しを他職種で行うことで、利用者に必要なケアやサービスを検討できるので、責任感と同時にやりがいも感じられるようになりました。

訪問看護師として半年働いて徐々に仕事に慣れてきたというタイミングで、任される仕事が多くなっていき、負担を感じることももちろんありましたが「1人ですべて判断をしなければならない」という先入観は正しくなく、実際の現場では看護師間での情報共有もしっかり行われているということを、実際に働く中で確認できたように感じます。

訪問看護師1年目をふり返って

訪問看護師として働き始めてからの1年は、とてもあっという間でした。業務を覚えることに加えて、利用者の自宅までの経路や利用者のご家庭の独自ルール(必ずスリッパを履く、扉を静かに閉める等)など、多くのことを覚える必要があるので、1年を日々必死に取り組んで過ごしたという印象です。もちろん、取り組む中では辛いと感じることもありましたが、月日が経つごとにやりがいを感じられる出来事が増えてきました。

入職して間もないころの私は、1人で利用者の自宅に訪問した際、ステーションで統一しているケア表通りに関わることはできても、何かイレギュラーな出来事や利用者に状態変化が起こった時、ご本人・家族からのふとした質問があった時に、スムーズに対応することができませんでした。

たとえば、訪問した利用者の方が38度台の発熱を起こし、対応に戸惑ったことがありました。往診が介入していたため、往診医に連絡したものの対応時間外のため繋がらず、どうするべきなのかと焦って先輩看護師に連絡・相談すると、ファストドクターへの連絡を提案されました。ファストドクターに連絡をすると、「現在は対応が難しいため救急要請をするように」と指示を受けたので、急いで救急要請を行い、無事に利用者を病院へ送り出すことができたという出来事がありました。訪問看護を始めてから救急要請をすることが初めてだったので、指示を受けてからも戸惑いがありましたが、なんとか利用者には落ち着いた姿勢で対応をし、スムーズには対応できなかったものの、訪問看護師として働く上で今後の自信に繋がる出来事となりました。

「利用者様にこの桜並木を見せてあげたい」なんて考えながら通勤

このように、経験を積むことで成長できた部分がいくつもあった1年。生活スタイルにも大きな変化がありました。病棟看護師時代は夜勤があるため、休日も半日睡眠で終わってしまうことが多く、夜勤のある生活になかなか慣れない日々でした。

訪問看護師に転職をしてからは、日勤のみの勤務になり、休日もしっかり確保できるので、規則正しい生活を送ることができるようになりました。ただし、この1年の経験で、訪問看護師であっても時に残業は避けられない職種であることも分かりましたので、訪問看護への転職を考える際はその点も理解しておく必要はあると思います。私の職場は緊急携帯の対応があり24時間体制で動いているため、それがある以上、つねに定時内で仕事を終了させることは厳しいのだということを理解するようになりました。

それでも、訪問看護師としてこれからも成長できるよう、求められる看護を行えるよう、自分なりのペースで成長していけたらと考えています。

まとめ

「看護師」にもいろいろな働き方がありますが、訪問看護師として1年働いてみて、訪問看護の魅力に気づくことができたので、思い切って転職してよかったと感じています。

限られた時間ではありますが、利用者1人に対してじっくり関わることができる点、自宅で過ごすことを望んでいる方の手助けができる点に、やりがいを感じます。

しかし、利用者それぞれにご家庭の独自ルールがあるので、吸引や点滴、保清など看護師の行うケアでも、病棟で学んだやり方がそのまま通じるわけではないことが多いです。その点を理解した上で訪問看護に向き合うことができれば、楽しさ・やりがいを感じられる天職だと思います。