新人看護師はやっぱり辛い? 1年目を乗り越えるために必要な3つのこと

転職活動お役立ち

1年目にして、夜な夜な転職サイトを徘徊

看護師 辞めたい

多くの看護師が一度は考えたり、インターネットで検索したりする言葉ではないだろうか。

特に「看護師1年目は辛い」は誰もが耳にしたことがある言葉だと思う。

私も、看護師1年目の生活を振り返るとやっぱりしんどかった。どのくらい辛かったかというと、入職して6カ月が経つ頃には夜な夜な転職サイトを徘徊して求人を眺めることが趣味になっていたほどだ

私は、4年制大学を出たあと看護師になり、大学病院に勤め始めた。

看護師になるまでに「新人看護師は大変だ」と聞くことは何度もあったが、看護学生時代の試験や課題、実習は大きなトラブルなく乗り越えることができていたし、正直、自分は要領が良い方だと思っていた。だから、いくら新人看護師が過酷だからと言って、自分に限って辞めたくなったり仕事に行きたくなくなったりすることはないだろうなという自信があった。とりあえず3年は同じ職場で働いて、その後はどうしようかなぁなんてのんきに考えていた。

しかし、入職して初めていかに自分の考えが甘かったかを思い知ることとなった。実際は入職6カ月目にして朝は泣きながら出勤、夜は転職サイトで求人を探しているうちに寝落ち……といった生活を送っていたのだ。

それでも1年後には自立してなんとか仕事をこなすことができるようになった。

私がどのようにして地獄の看護師1年目を乗り越えたか、振り返ってみる。

希望通りの配属、優しい先輩。順風満帆の看護師ライフ?

私は看護師国家試験終了後に、ずっと憧れていた病院に就職した。その病院は規模が大きく、珍しい症例や最新の治療方法などを学ぶことができると聞いていた。教育体制が整っており、実習で関わった看護師の知識が豊富でかっこよかった。

更に、第一希望の病棟に配属が決定。配属先は学生時代の実習で3週間ほどお世話になった病棟であったため、大体の雰囲気は分かっており入職後のギャップは少ないと思っていた。師長や先輩が優しく、同期も明るく気の合う人ばかりだった。

1か月目は先輩のシャドーイングとOJTで看護技術を学び、2カ月目からは先輩の見守りのもと患者の受け持ちが開始となった。徐々に受け持ちや習得した看護技術が増えていき、毎日ワクワクしていた。

私の病棟は、1年目看護師は残業することもなく、毎日定時で帰宅できていた。帰り道は同期とその日経験したことやできるようになったことを話し、「明日も頑張ろうね」と言い合って別れていた。毎日覚えることがたくさんあり、夜は自宅で1〜2時間勉強していた。勤務後に勉強時間を確保することは大変だったが、憧れの病院、希望の診療科で働く夢が叶ったことでやる気に満ちていたため苦ではなかった。

入社半年。雲行きが怪しくなる。

入職当初は残業無し、先輩が優しく雰囲気の良い病棟だと思っていた。

しかし、3カ月目に入ってから少しずつ残業が増え、気づいたら退勤時間が定時の17時から20時へ。

入職3年目のある先輩は突然出勤しなくなりそのまま辞め、師長は体調を崩し交替(この師長さんは常に新人看護師を気にかけてくれていて、いつも私たちに明るく声をかけてくれていた。後から聞いた話だが、同時期に数人のスタッフから同時に退職の相談をされており、精神的負担が大きかったようだ)。

私たち1年目は「なんだかおかしいぞ」とザワついた。

また、最初の1〜2カ月は優しい先輩だけが1年目の指導を担当していたが、3カ月目からは理不尽で怖い指導者が姿を見せ始めた。その日の機嫌で指導の方法が変わったり、分からないことがあると1日かけてネチネチと詰めてきたりする先輩だった。

薬剤を混注していたときに、(教科書的には間違っていないはずだが)シリンジ(注射器)の持ち方が違うと激怒された。その日1日「誰に教わったの?」「もう一回やり方を調べて」と言われた。

先輩から教えてもらったことと全く同じ内容を別日に話すと「違う、何言ってんの。ちゃんと調べて。」と言われた。自分が言ったこと自体を覚えていない……。

さらに、受け持ち患者の数は自分のキャパシティを越えて増え続けていった。

病棟では毎日多くの検査や手術、点滴を行う必要があるため1日のスケジュールがギリギリである。そのうえ、1年目看護師は自立していない看護技術を先輩の見守りのもと行うことになっているため、手が空いている先輩に見守りをお願いする必要があった。そのため、先輩を探して頼むことに時間を取られてしまい、業務をこなすのに時間がかかってしまう。業務の中には決められた時間に行わなければならないものも多いため、常に「間に合わせないといけない」と1日中焦っていた。なるべく残業を減らすため昼休憩中にお弁当を食べながらカルテ記録を進めた。

毎日ドタバタと慌てて働いていると、当然ミスが生じる。

初めて起こしたインシデントの原因は明らかに私の確認不足だった。先輩からの指摘でインシデントが発覚した時は「どうしてこんなミスをしてしまったんだろう」と数日間落ち込んだし、インシデントを起こした後は再発防止策をレポートにまとめ師長に報告する必要があるのだが、絶対次に同じようなミスを起こさないという自信が持てず不安になった。

また、朝の業務開始1時間前から情報収集を行い準備していたが、行動計画について指導者の先輩に質問され頭が真っ白になってしまいしどろもどろになってしまう。

「この手技やったことある? 何回目? やる時に気を付けることって何か分かる?」

「この検査をやる意味って何か分かる?」

「なんでこれをやるの?」

先輩からの質問にやっと答えたと思ったら、追加で「他には?」と言われると冷や汗がどっと出る。

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そうして毎日焦りと緊張に晒されていると、徐々に通勤が億劫になり、しまいには家から最寄り駅まで歩いているときに涙が出るようになってしまった。職場に着いたら腹痛でトイレに直行。吐き気に耐えながら朝の情報収集。初めての検査や手技があると先輩に質問攻めにされることを想像して涙が出そうになる。

このような強いストレス下であったが、同じ境遇の同期と愚痴を言い合ったり、先輩の1年目時代の話を聞いたりすることで励まされなんとか毎日出勤していた。

上記の状況から持ち直したきっかけは転職活動を始めたことだった。

自分が一番限界に近いのではないかと思っていたときに、一番仲の良かった同期から「実は私、来月転職することにしたんだ」と告げられ衝撃を受けた。

同期の報告を機に、後を追うように私も転職サイトへ登録。その勢いのまま、あるクリニックの面接を受けることにした。夜勤がなくなれば身体的負担が少なくなると考えたのだ。

その時は本気で転職する覚悟だった。しかし、面接とクリニックの説明を受けた後「今の私には病棟の方が合っているかもしれない」とふと思い直した。今の職場を辞めてまで働きたいほど魅力的なクリニックではないと直感が告げていた。まだ看護師として一人前ではないため、転職する前に今の病棟でもっと身に着ける看護技術や知識があると思い直した。一度他の環境を見ることで冷静になることが出来たのだった。

それからは気持ちが吹っ切れ、仕事に対し前向きに取り組むことができるようになった。

1年目を駆け抜けて

1年目看護師の辛さはどこから来るのか。

自分自身の1年目生活を振り返り、新人看護師のストレスは常に付きまとう不安や緊張感と、自身の責任感の影響が大きいと気づいた。

人の命に関わる仕事でストレスがあるのは当然。右も左も分からない1年目看護師なら尚更だ。人の命に関わる環境で、1年目看護師は毎日初めての業務やイベントに直面し焦りや不安、緊張に晒される。指導者である先輩との人間関係に悩むこともある。

また、1年目だから知らないことばかりであることは当然だと頭では理解していたが、仕事のできる先輩たちの姿を近くで見ていることや、患者のために何かしたいという気持ちから焦ってしまうことがあった。更に、日々の業務に追われ気持ちに余裕がなくなってしまい、肝心の患者にも優しくできない日があり自己嫌悪に陥ることもあった。看護師には真面目な人が多い印象があるため、このような状況から必要以上に責任感に苛まれたり、自分の「できない」面を責めてしまったりしまいがちなのではないか。

1年目を乗り越えるのに必要だったこと

いま思うに、1年目を乗り越えるために必要なことは3つあったと感じる。

1つめは自分が「できない」ことを当然だと受け入れる心の持ち様、2つめは知識や経験をコツコツ積み上げること、3つめは相談できる同期や先輩の存在だ。

前述のように、持ち前の責任感の強さや根の真面目さから必要以上のプレッシャーを感じる看護師は多い。しかし、1年目の新人が知らないことやできないことがあるのは当然であり、悩む必要はない。誰が何と言おうと1年目看護師は毎日出勤するだけで満点だし、毎日頑張っている自分を認めてあげよう。

また、1年目看護師の不安や焦りは経験不足を原因とするものが大きいと思う。その不安を緩和するためには、知識や経験をひとつひとつ積み上げていくしかない。時間はかかるが、1年目看護師が抱える不安は経験の蓄積と共に確実に解消されていく。その日受け持った患者の病態を調べる、申し送りが上手な先輩の話し方を真似してみるなど、毎日1つずつでも習得していこう。経験をコツコツ積み上げていけば1年後振り返れば必ず成長している。私も、困った患者の一言や質問に対して最初は「○○さんがこう言っているんですけど…」と慌てて先輩に相談していたが、1年経つ頃にはいちいち動じずに自分で対応できるようになった。

同期や先輩を頼ることも大事だ。

同じ境遇の同期は必ずあなたの気持ちに共感してくれるだろうし、「この状況が辛いのは自分だけじゃない」と分かると安心する。先輩の1年目時代の話を聞いてみることもオススメだ。夜勤中の仮眠時に熟睡してしまい休憩時間を1時間過ぎてしまったエピソードを語ってくれる先輩もいた。偉大な先輩も自分と同じようなミスをしていたと思うとほっとする。

どの先輩も「1年目が一番しんどかったよ~」と口にしていたため、1年目を乗り越えたら楽になるかもと希望が持てた。

1年目看護師からすると2年目以上の先輩は皆仕事ができて遠い存在のように感じるが、先輩たちも1年目の時は同じような体験をしてきている。

また、実際に転職活動を行い他の職場に目を向けてみると、案外今の病院が自分に合っていると気付いたり、もう少し頑張ってみようと思えたりするきっかけになるかもしれない。
看護師一年目は慣れない環境で強いストレスに晒されるため、辛さを感じる人が多い。誰もが通る道だが、感じる負担感の大きさは人それぞれ。どうしても辛いときは少し休んだり逃げたりしてもいいことを心に留めておいてほしい。