看護師の就業者数は年々増えていますが、医療現場では常に人手不足が叫ばれ、近年はコロナ禍で疲弊する現場がメディアで多数報道され、離職率が高そうなイメージがあります。
ここで実際の看護師の離職率と、その退職理由、具体的な現状とともに見ていきましょう。
看護師の離職率は高い?
看護師の就業者数は年々増加していますが、「2022年 病院看護・助産実態調査」では、看護職員(正規雇用)の11.6%、新卒採用者では10.3%が離職しています。
一方、全産業での一般労働者の離職率は11.1%となっており、大きな差はありません。
参考:公益社団法人日本看護協会「2022年病院看護・助産実態調査」
看護管理の現場では、「人が定着しない」「欠員を埋めるのに困っている」という話が日常的にあり、離職率が高いイメージがありますが、全産業での一般労働者の調査と比べると、看護師の離職率が抜群に高いわけではないようです。
とはいえ、専門教育〜試験に費やしたコストと時間を考えると、一般的な職業と同程度だから良し、ではないでしょう。
また現場から離れた「潜在看護師」の数はおよそ51.8万人、「潜在准看護師」は27.5万人、と推計され、看護師の離職問題は社会問題となっています。近年の高齢患者の増加、高度化・複雑化している医療の現場で看護師不足による危機感が高まっています。
参考:厚生労働科学研究成果データベース 「潜在看護職員数の推計」
各都道府県の看護師の離職率
都道府県別の看護師の離職率は、以下のような傾向となっています。
離職率の高い都道府県
1位 | 東京都、神奈川県 | 14.6% |
2位 | 大阪府 | 14.3% |
3位 | 千葉県 | 13.5% |
4位 | 埼玉県 | 13.3% |
5位 | 兵庫県、愛知県 | 12.8% |
離職率の低い都道府県
1位 | 徳島県 | 5.9% |
2位 | 青森県、山形県 | 7.3% |
3位 | 岩手県、山梨県 | 7.4% |
4位 | 島根県 | 7.5% |
5位 | 鳥取県 | 7.7% |
人口が多く、都市の規模が大きいほど求人数も多くなります。「違う分野に挑戦したい」「キャリアアップをしたい」と考えた時に選択肢が多く、転職しやすいので、離職率も高くなっていると考えられます。
看護師が退職してしまう理由は何?
看護師の退職理由の上位5位は以下となっています。
1位 | 出産・育児のため | 22.1% |
2位 | その他 | 19.7% |
3位 | 結婚のため | 17.7% |
4位 | 他施設への興味 | 15.1% |
5位 | 人間関係がよくないから | 12.8% |
結婚・出産といったライフステージの変化
近年は男性看護師も増加傾向にありますが、やはり女性が多い看護師。
厚生労働省の「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、女性看護師は全体の92.2%でした。
女性看護師では結婚・出産といったライフステージの変化に応じて、働き方を変える方が多くなります。女性が働きやすい環境を整えている職場が多くなってきていますが、育児をしながらの勤務自体、難しいと考える人も多いでしょう。
他施設への興味
看護師は、病院、介護施設、保育園、一般企業などさまざまな職場で需要があります。他業種に比べると、売り手市場のため、転職先がなくて困ることはそうありません。
「専門分野に特化した看護を極めたい」「今の業務に対してマンネリを感じる」「より良い待遇を求めたい」など、他施設のほうを魅力的に感じれば、転職に踏み切りやすいといえるでしょう。
人間関係の悩み
看護師に限らず、一般的な職場でも、人間関係の悩みから転職するという方は多くいます。
ただ、女性が多い看護の職場ならではの人間関係があります。看護師同士で、ささいな言葉一つから不和になり、大きな軋轢を生み悩んでいる、という経験談は多く聞かれます。
また医師や薬剤師、検査技師、理学療法士などと連携もあり、また患者やその家族とも関わります。
うまくコミュニケーションが取れなかったり人間関係が悪くなると、仕事に影響が出やすい職場なので、人間関係の悩みから、離職してしまうケースも多くみられます。
潜在看護師とブランクナース
看護師免許を持ちながら、離職してから看護師として働いていない人を「潜在看護師」といいます。
「潜在看護師」の数はおよそ51.8万人、「潜在准看護師」はおよそ27.5万人、と推計されています。看護職員の不足から、社会的に注目されるようになり、都道府県のナースセンターで潜在看護師の復職支援を行うようにもなってきました。
性別で見ると、看護職員(看護師と准看護師)の潜在数 と潜在率は、男性が 97,602 人で45.21%、女性が 696,282 人で 31.78%、男性の潜在率が高くなっています。
特に40 歳代後半以降の男性看護師の潜在率が、女性より顕著に高くなっています。昇進や昇格の機会が得られず、昇給につながらないことが、男性看護師の潜在率を押し上げている可能性が指摘されています。
参考:厚生労働科学研究成果データベース 「潜在看護職員数の推計」
ブランクナース
ブランクがある場合、復職を考えていても「自分の知識・技術は時代遅れでは?」「体力的に不安かも」という思いから、何となく復職しないケースもあります。こういう場合は、非常勤から始めて、徐々に身体と知識を慣らしていくこともおすすめです。
現在政府は、マイナンバーを活用した看護職の就業促進のためのシステムの構築を目指しています。潜在看護職員を掘り起こし、看護人材を確保する狙いです。
厚生労働省: 医療関係資格における マイナンバー制度の活用について
退職しない看護師が仕事を続けられる理由
では逆に、同じ就業先で働き続けている「辞めていない」看護師は、どういった理由から続けられているのでしょうか。
以下が理由の上位5位となります。
1位 | 勤務形態が希望通りである | 56.1% |
2位 | 通勤の利便性が良い | 52.0% |
3位 | 雇用形態が希望通りである | 43.6% |
4位 | 同僚との関係が良い | 38.7% |
5位 | 時間外労働(残業)が少ない (ない) | 34.4% |
看護師が離職しない理由としては、「勤務体系や雇用体系が希望通りであること」「通勤が便利なこと」が多く挙げられています。
また「同僚との関係が良い」からやはり人間関係を重視、「時間外勤務・残業がないこと」からも、ワークライフバランスが取れ、精神的負担が少ない環境であることが退職しない理由になっているようです。
職場によって看護師ひとりにかかる負担に大きな差があるため、それが退職するかしないかの決め手ともいえます。
今すぐ退職する気は無くとも、ぼんやりと「このまま働いていいのかなぁ」と思う時は、他施設の情報を見たりする事もおすすめです。昔と比べ、インターネットで自分が望む条件の職場を検索しやすくなりました。様々な職場の情報を見ることで、今いる職場の長所を再発見することもあります。現状を客観視もでき、自分の求めているものをイメージしやすいでしょう。
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