再就職するまでに気になるのが、失業中の「お金」のこと。
失業手当は、雇用保険制度によって提供される支援手当で、新しい仕事に就くまでの生活をサポートするもの。正式には「失業給付金」と呼ばれます。
ただ、退職したら自動的に受給できるものではありません。受け取るには条件があり、受給手続きは自分自身で行う必要があります。
失業手当をスムーズに受け取るためにも、条件、金額、期間、申請のやり方などについて確認しておきましょう。
失業手当をもらうための条件は?
次の2つの条件に当てはまる方が、受け取れます。
条件1. 雇用保険に過去2年間で通算12ヶ月以上は加入しているか
雇用保険の被保険者期間が、「離職前の2年間で通算12ヵ月以上」あることが必要です。
雇用保険に入っていたかは給与明細の「雇用保険」の欄を見れば確認できます。
ちなみに公務員の場合は、雇用保険に入ることはできないので失業手当はなく、代わりに退職手当があります。例:独立行政法人国立病院機構に看護師として勤務していた
通算○ヶ月の数え方・・・離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金が支払われた日数が11日以上ある、又は賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を「1ヶ月」と数えます。
ただし、会社都合で退職せざるえなかった場合は、「離職前の1年間で通算6ヵ月以上」に軽減されます。また自己都合でも正当な理由があった場合は6ヶ月以上に軽減されます。
会社都合の退職理由
・倒産や解雇(懲戒は除く)
・当初提示された労働条件と事実が大きく違っていた
・賃金(退職手当を除く)3分の1以上の額が期日までに未払い
・もともと支払われていた賃金に比べ額が85%未満にダウン
・長時間の時間外労働(離職前半年以内に3ヶ月連続45時間以上、1か月で100時間など)
・妊娠や出産を理由にした不当な扱い
・著しい嫌がらせやハラスメント
・事業所の業務が法令に違反した
自己都合でも正当な理由とされ軽減されるケース
・けが、病気
・親族の介護
・配偶者の転勤
・事業所が通勤困難な地へ移転
・妊娠や出産、育児など
参考:ハローワーク 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
条件2. ハローワークで求職の申し込みをおこない、積極的に仕事を探しているか
失業手当を受け取ることができるのは、仕事に就く意志と能力がある方です。
失業保険を申請し認定された場合は4週間ごとに1度、指定日にハローワークへ行って、求職活動の報告をすることが必要です。
次の人は対象外です。
- 離職時に次の就職先が決まっている
- 病気やけがのため、すぐに働けない
- 妊娠・出産・育児のため、すぐに働けない
参考:厚生労働省HP Q2雇用保険の受給要件
パート・非常勤でもOK?
雇用保険に入っており、上記の条件1と2を満たしていれば受け取れます。
失業手当はいくら受け取れる?計算する方法
59歳以下の方はおおよそ離職前の給与の50~80%、60~64歳以下の方は45~80%です。
離職前の給与が低いほど、給付率は高く設定されています。
STEP1. 賃金日額を計算する
「賃金日額」=「離職前6ヵ月間に支払われた給与の合計額」➗180日
下の表で、離職時の年齢を当てはめて、上限額を確認しましょう。上限額を超えた場合は、上限額が賃金日額です。下限額を下回る場合、下限額を賃金日額とします。
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
29歳以下 | 13,890円 | 2,746円 |
30〜44歳 | 15,430円 | |
45〜59歳 | 16,980円 | |
60〜64歳 | 16,210円 |
■ナースAさんの場合
Aさんは22歳で就職→44歳で会社都合で退職。離職前6ヵ月の給与は90万円でした。
Aさんの賃金日額は、90万円(給与)÷180日=5,000円となります。
STEP2. 基本手当日額を計算する
「基本手当日額」=「賃金日額」×給付率
STEP1で求めた賃金日額に給付率を掛けると基本手当日額が出ます。
【~59歳までの給付率】
賃金日額 | 給付率 |
12,580円※1以上 | 50%※2 |
5,110円以上、12,580円※1以下 | 50~80%※3 |
2,746円以上、5,110円未満 | 80% |
*2 離職時の年齢が60〜64歳なら45%
*3 離職時の年齢が60〜64歳なら45〜80%
参考:厚生労働省 雇用保険の基本手当日額が変更になります〜令和5年8月1日から〜
■ナースAさんの場合
Aさんは1の計算で「賃金日額5,000円」でしたので、給付率は80%。
基本手当日額は、5,000円(賃金日額)×80%(給付率)=4,000円となります。
基本手当日額にも、上限額と下限額があります。
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
29歳以下 | 6,945円 | 2,196円 |
30〜44歳 | 7,715円 | |
45〜59歳 | 8,490円 | |
60〜64歳 | 7,294円 |
STEP3. 支給総額を計算する
「支給総額」 =「基本手当日額」 × 給付日数
STEP2で求めた基本手当日額に給付日数をかけると、失業手当の支給総額が出ます。給付日数は自己都合での退職か、会社都合での退職かによって異なります。
自己都合の場合
離職時の年齢 | 雇用保険の被保険者期間 | ||
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合の場合
被保険者であった期間 | |||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
■ナースAさんの場合
Aさんは、22歳から44歳まで22年間働き、会社都合で退職。上の表で給付日数は270日とわかります。
総支給額は、4,000円(基本手当日額)×270日(給付日数)=108万円 となります。
賃金額や離職時の年齢などを入力すると、失業手当の支給総額や給付日数が計算できるWEBサイトもあるので利用してみるのも良いでしょう。
失業手当はいつから受け取れる?
失業手当は申請後約1~2ヵ月で受給開始となります。退職理由が会社都合であるか自己都合であるかによって、開始時期が違ってきます。
退職後、元の勤務先から離職票が届いたら、住居を管轄するハローワークへ持参して求職の申し込みをおこないます。*ハローワーク 所在地一覧
ハローワークの職員と面談して、受給資格が決定します。
受給資格が確定した日から7日間の待機期間があります。
待機期間の後、雇用保険の受給説明会に参加し、雇用保険受給資格者証を受け取ります。受給資格が決定してからの4週間後が、初回の失業認定日となります。
指定された日にはハローワークに行って失業認定を受けることが必要です。
・会社都合で辞めた方、自己都合でも正当な理由があった方
初回の失業認定の1週間後に失業手当が振り込まれます。最初の失業手当は20日分前後の額となります(7日間の待機期間があるため)。その後も、4週間ごとにハローワークで失業認定を行うことで、最大28日分の失業手当を受け取ることができます。
・自己都合で辞めた方、懲戒解雇された方
待機期間の7日間後プラス、2ヶ月間が給付制限期間となります。給付制限期間の後に、2回目の失業認定が行われ、初めて失業手当が支給されます。初回の失業手当は約15日分の額となります(給付制限期間が終わってから2回目の認定日前日までの分のため)。その後は、会社都合で辞めた場合と同様の手続きが続きます。
失業手当に必要な書類と申請手順
次の書類が必要ですので準備してください。
・雇用保険被保険者離職票
退職から10日〜2週間後に元の勤務先から届く
・個人番号を確認できる書類
マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)など、個人番号が確認できるもの
・本人確認書類
マイナンバーカード、運転免許証など
・証明写真2枚
半年以内撮影、正面上半身、タテ3.0cm×ヨコ2.4cm。手続・申請の都度にマイナンバーカードを提示すれば省略可能。
・本人名義の通帳かキャッシュカード
一部指定できない金融機関あり。ゆうちょ銀行ならどこのハローワークでも可能。
参考:ハローワーク_雇用保険の具体的な手続き
手順
住所を管轄するハローワークに行き、求職の申し込みを行ってから失業保険申請の手続きを進めます。
可能な日時は、月曜日~金曜日(休祝日・年末年始を除く)の8時30分~17時15分です。初回は16時前までに行く事をおすすめします(求職申込みには一定の時間がかかるため)。
上記の必要書類を提出し、面談→失業状態であると判断→受給資格が決定します。どの離職理由でも、受給資格のある方全員に、この日から通算7日間の待期期間が設けられます。
その後、指定された日程の雇用保険受給説明会に出席し、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取りましょう。
また、この時に第1回目の失業認定日が提示されます。この失業認定日までの間に、ハローワークで積極的な職業相談や就職活動が必要となります。失業認定日に「失業認定申告書」に求職活動の状況等を記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに提出します。失業認定されたら1回目の受給となります。その後は支給終了まで4週に1度、失業認定日が訪れるので、同様に求職活動を行います。
失業手当受給中にアルバイトはしてもいいの?
失業手当の手続きをしてからアルバイトをする方は、以下のことに気を付けてください。
・待期期間中の7日間はアルバイトをしない
失業手当の受給資格が決定した日から7日間の待期期間中はアルバイトをしてはいけません。アルバイトをするなら待機期間が明けてから、初回の失業認定を受けたあとにしましょう。参考:厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領 51101-51200 第9 待期(P171)」
・1日の勤務時間を4時間以上にする
1日の勤務時間が4時間未満の場合、内職やお手伝いとみなされ、失業手当が減額してしまうケースがあります。逆に4時間以上働いた日は、支給対象から外されます。とはいえ、「4時間以上働いた日」が支給対象にならないだけで、給付日数は変わりません。給付金額の面から見ると、4時間未満勤務で給付金額が減額されるより、4時間以上勤務して給付日が先送りされるだけの方がお得です。
・1週間の勤務時間を20時間未満にする
1週間に20時間を超えて働くと、雇用保険加入の対象となるため、就職したとみなされて失業手当が支給されない場合があります。
・失業認定日に必ず申告する
4週間に一度の失業認定日にはきちんと申告しましょう。虚偽の申告をすると「不正受給」と見なされ、受給した額の3倍の返金となります。働いた日数や収入は正確にメモしておきましょう。
失業手当の受給のためには、速やかにハローワークへ
再就職先の目処が立っていないまま仕事を辞めたときには、なるべく速やかにハローワークで失業手当の申請をしましょう。
失業手当の受給には、申請から一定期間ありますので、申請が遅れるとその分支給も遅くなっていきます。失業手当が受け取ることができるのは、仕事を辞めてから原則1年以内です。
また、再就職先が決まったときに給付日数が3分の1以上残っている場合、再就職手当(就職祝い金のようなもの)が受け取れます。
公的支援制度を積極的に活用しながら、自分に合った職場を見つけていきましょう。